はじめに|雑誌の読者参加企画から生まれた唯一無二のRPG
※記事内の画像は全てイメージです。実際の製品・写真とは異なります。
1992年10月30日、日本コンピュータシステム(メサイヤ)からファミリーコンピュータ向けに定価7,900円で発売された『ダブルムーン伝説』は、ゲーム雑誌「マル勝ファミコン」(角川書店)で連載されていた読者参加型ゲームを原作としたRPGです。
原作の「ダブルムーン伝説」は、ゲーム製作集団ORGの大貫昌幸さんによって企画・デザインされ、1989年から連載を開始。「二つの月が天にある世界」を舞台としたファンタジー世界観、特撮ヒーロー作品的な要素も取り入れた物語、そして読者が参加してストーリーを紡ぐという斬新な形式で、当時のゲーム雑誌読者を熱狂させました。
この成功を受けてTRPG(テーブルトークRPG)化も実現し、「ロードス島戦記」と並ぶ日本のTRPG黎明期の金字塔として現在も語り継がれる作品となっています。1992年のファミコン版は、そんな人気コンテンツの世界観をコンシューマゲームとして体験できる貴重な一本です。
第1章|基本情報・スペック
複数の公的ソースで確認した基本スペックは以下の通りです。
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| タイトル | ダブルムーン伝説 |
| 機種 | ファミリーコンピュータ(FC) |
| 発売日 | 1992年10月30日 |
| 発売元 | 日本コンピュータシステム(メサイヤ) |
| ジャンル | ロールプレイングゲーム(RPG) |
| 定価 | 7,900円 |
| プレイ人数 | 1人 |
| 権利表記 | ©メサイヤ |
発売元の表記については「メサイヤ」と「日本コンピュータシステム」の2種類が確認されており、メサイヤは日本コンピュータシステムのブランド名です。定価7,900円は当時のファミコンRPGとしてもかなり高価な部類に入ります。
第2章|原作「ダブルムーン伝説」の誕生と展開
ファミコン版を理解するには、まず原作の「ダブルムーン伝説」について知ることが欠かせません。
読者参加型ゲームの「走り」として
「ダブルムーン伝説」は、1989年に「マル勝ファミコン」誌上で連載を開始した読者参加型ゲームです。ORG(Out Reach Group)が企画・製作を担当し、デザインは大貫昌幸さん、ゲームマスターは明日川敬さん・和栗朗さん、イラストは草彅琢仁さん・かんなたかしさんが担当しました。
連載は「1989年 vol.16 – 1993年 vol.10」(後に誌名が変わり「マル勝スーパーファミコン」まで継続)にわたり、掲載誌の月2回刊という特性を活かしてTRPGリプレイ(誌上シアター)と読者参加型ゲームの両輪で展開されていました。
この連載は日本の読者参加型ゲームの走りとなった先駆的企画であり、成功を受けて他のゲーム雑誌でも同様の読者参加型企画が相次いで始まるきっかけとなりました。
ロードス島戦記と並ぶTRPG黎明期の功労者
「ダブルムーン伝説は『ロードス島戦記』と並ぶ、テーブルトークRPG黎明期の功労者として現在でも名高い」と記録されています。
TRPGは1980年代後半から1990年代初頭にかけて日本で急速に普及しましたが、その普及に大きく貢献した要因のひとつが雑誌リプレイでした。コンプティーク(角川書店)が生んだ「ロードス島戦記」と、マル勝ファミコンが生んだ「ダブルムーン伝説」は、その代表格として今日も語り継がれています。
人気を博した原作はTRPG化も実現し、1991年7月5日に「ダブルムーン伝説RPG」として角川書店から出版されました。
未完に終わった連載と悲劇
しかし本作の背景には、不運な出来事が重なっています。
第3部の途中で起きた角川書店の内紛(実弟の角川歴彦さんが1992年10月にメディアワークスを設立し、編集スタッフが大挙して移籍)が連載を直撃。さらに追い打ちをかけるように、ORGの社長であり本作のデザイナーである大貫昌幸さんが1993年1月26日に急逝されました。大貫さんは1964年生まれで、わずか28歳という若さでした。この二つの不運が重なり、連載は第3部の終了をもって未完のまま幕を閉じることになりました。
まさにファミコン版が発売された1992年10月という時期は、角川書店の内紛が起きたまさにその月でもあり、ゲームの発売と原作の危機が同時に進行していた時期だったのです。
第3章|ゲームのストーリー|出生の秘密と生き別れの双子
ゲームのストーリーの概要は以下の通りです。
「出生の秘密を知った主人公が、魔王にさらわれた生き別れの双子を探すための旅に出る」という設定です。「二つの月が天にある世界」という独特の世界観を舞台に、主人公が自らの出自の謎と向き合いながら旅を続けるという、当時のファミコンRPGとしては重厚なテーマが設定されています。
ゲームの主人公はプレイヤーが設定するオリジナルキャラクターです。なお主人公がパーティ内で倒された場合、他のメンバーが生き残っていてもゲームオーバーになるという仕様となっており、主人公の生存が最優先課題となるシステムです。
第4章|ゲームシステム詳細|職業制と「ねらう」コマンドの戦略性
職業制と4人パーティ
本作の最大の特徴のひとつが、充実した職業システムです。プレイヤーはゲーム開始時に主人公の職業を3種類から選択し、残る仲間キャラクターは11種類の職業から構成されるという、合計14種類の職業が用意されています。
各職業によって異なる特殊攻撃が使用できる点が本作の戦闘システムの核となっており、パーティ構成をどう組み合わせるかによって戦略が大きく変わります。
「ねらう」コマンドの戦略性
本作で特に重要な戦闘コマンドが「ねらう」です。「ねらう場所により大ダメージを与えたり、混乱やデバフを与えたり、一部の技を使用不可能にできる」という、部位ごとに異なる効果が設定されており、単なる連打では攻略できない戦略的な深みが生まれています。
敵の弱点を攻撃できるシステムと組み合わせることで、強敵を効率よく攻略する方法を模索するのが本作の醍醐味のひとつです。
ドラクエ・FFクローンという評価について
「システム的にはよくある『ドラクエ』『FF』クローンに過ぎない」という辛口の指摘もあります。原作の「ダブルムーン伝説」が持つ独自性に比べると、ファミコン版のゲームシステムは当時の標準的なRPGの文法に沿ったものとなっており、原作ファンの期待を完全には満たせなかった面もあります。
一方で「レベル上げさえしっかりやれば普通にクリアはできるレベル」という評価もあり、理不尽な難易度ではなくクリア可能なバランスに仕上がっています。
第5章|当時の評価|高難易度と独自システムへの賛否
ゲーム誌「ファミコン通信」のクロスレビューでは、6・5・5・5の合計21点(満40点)という評価を受けています。また「ファミリーコンピュータMagazine」の読者投票による評価は19.2点(満30点)でした。
ファミコンソフト一覧(mobajie.com)のユーザー投票では「良ゲー1票・クソゲー7票・合計8票」という厳しい評価もあります。定価7,900円という高価格設定に対する期待値の高さが、評価を厳しくした側面もあると考えられます。
Amazon.co.jpのレビューには「小学生の時に、難し過ぎてクリア断念した作品!値段は高かったけど…」「ファミコンRPG特有の鬼畜内容をしっかり楽しみます!」という声があり、高難易度と高価格という組み合わせが当時のプレイヤーに強い印象を残していたことがわかります。
第6章|メサイヤ(日本コンピュータシステム)というメーカー
本作を発売したメサイヤ(日本コンピュータシステム)は、PCエンジンやスーパーファミコン向けにも多数のゲームを発売していたメーカーです。PCエンジン向けにはシューティングゲームの名作も複数手がけており、硬派なゲームラインナップで知られていました。
1992年のファミコン市場はスーパーファミコンへの移行が進んでいた時期であり、本作はそのようなハード移行期にあえてファミコン向けに発売された重厚RPGとして、市場では比較的マイナーな扱いを受けることとなりました。
第7章|現在のレトロゲームとしての価値
定価7,900円という高価格で発売された本作は、当時から流通量が多くなかったこともあり、現在のレトロゲーム市場ではプレミア価格がついています。
Yahoo!オークションの落札相場では最高22,550円・平均13,360円という取引実績があり、箱・説明書付きの完品はさらに高値となる傾向があります。「ロードス島戦記と並ぶTRPG黎明期の金字塔」というコンテンツの歴史的価値と、ファミコン末期の希少ソフトという希少性が組み合わさった結果といえます。
またTRPGファンや「マル勝ファミコン」世代の方々にとっては、原作の思い出とともに語られる特別な作品でもあり、コレクターズアイテムとしての需要は根強いものがあります。
まとめ|悲劇に彩られた原作と、ファミコンに刻まれた世界
『ダブルムーン伝説』は、1992年10月30日に日本コンピュータシステム(メサイヤ)からファミリーコンピュータ向けに定価7,900円で発売されたRPGです。「マル勝ファミコン」誌上の読者参加型ゲームとTRPGリプレイという形で人気を博し、「ロードス島戦記と並ぶTRPG黎明期の金字塔」と評される原作コンテンツを、コンシューマゲームとして体験できる一本です。
角川書店の内紛と原作デザイナー・大貫昌幸さんの急逝という悲劇に彩られた本作の背景を知ってプレイすると、ゲームへの感慨も一層深くなります。14種類の職業システムと「ねらう」コマンドの戦略性を持つ本作を、ぜひ一度体験してみてください。
本記事に記載の発売日・価格・ゲームシステム・原作情報・評価は、Wikipedia(ダブルムーン伝説の項目・大貫昌幸の項目・マル勝ファミコンの項目・ダブルムーン伝説RPGの項目)、BEEP公式ブログ、ピコピコ大百科、ニコニコ大百科、ピクシブ百科事典、レトロゲームの説明書保管庫、ファミコンソフト一覧(mobajie.com)、ファミコンソフトカタログ(tomoekazumi.ninja-web.net)、Amazon.co.jp商品情報、Yahoo!オークション落札相場に基づいております。
(出典 Youtube)
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