はじめに|なぜ今、タイムズ・オブ・ロアが注目されるのか
※記事内の画像は全てイメージです。実際の製品・写真とは異なります。
1990年代初頭のファミコン市場は、ドラゴンクエストやファイナルファンタジーといった日本産RPGが全盛を誇っていた時代でした。そのような中、1990年12月7日に東宝から発売された『TIMES OF LORE 失われたメダリオン(タイムズ・オブ・ロア)』は、欧米産のアクションRPGをファミコン向けにローカライズした、非常に個性的な一本です。
経験値やレベルアップという概念を持たず、昼夜サイクルや空腹の管理まで求められるこのゲームは、当時の日本のRPGとは一線を画した設計思想を持っていました。レトロゲーム愛好家の間で今なお語り継がれる本作について、その発売経緯・ゲームシステム・歴史的意義まで、詳しく解説いたします。
第1章|基本情報・スペック
まずは本作の基本情報を整理いたします。複数のデータベースおよびAmazon.co.jpの商品情報と照合し、以下のスペックが確認されております。
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| タイトル | TIMES OF LORE 失われたメダリオン |
| 読み | タイムズ・オブ・ロア |
| 機種 | ファミリーコンピュータ(FC) |
| 発売日 | 1990年12月7日 |
| 発売元 | 東宝 |
| 開発元 | オリジン・システムズ(Origin Systems) |
| ジャンル | アクションRPG |
| 価格(定価) | 5,300円(税別) |
| 容量 | 1MB+64KRAM |
東宝といえば映画・テレビ事業で知られる日本の大手エンターテインメント企業ですが、ファミコン時代には複数のゲームソフトを発売しており、本作もその一つです。開発を担ったオリジン・システムズは、ウルティマシリーズで世界的に有名な米国のゲームデベロッパーで、後に『ウィング・コマンダー』を生み出したクリス・ロバーツ氏が本作を手掛けました。
第2章|オリジナル版の誕生|クリス・ロバーツと1988年のPC版
日本のファミコン版より先に、本作のオリジナルは1988年に北米でPC(MS-DOS)向けに発売されています。開発したのは、後に『スター・シチズン』で知られることになるクリス・ロバーツ氏で、当初は「ウルトラ・レルム(Ultra Realm)」という仮称で開発が進められていました。
ロバーツ氏によれば、本作のインターフェース設計は任天堂の『ゼルダの伝説』に代表されるコンシューマゲームの操作体験から大きな影響を受けたとのことです。「日本市場がゲームに求める制約は、ゲームの深みやクオリティを損なうものではない」と述べており、コンシューマライクなシンプルさとPC-RPGの自由度を両立させることを目指していました。
PC版はMS-DOSをはじめ、コモドール64、ZXスペクトラム、アムストラッドCPC、アタリST、Apple II、そしてファミコン(海外版NES)およびアミーガにも移植され、多くのプラットフォームでプレイされました。ゲームの評価は概ね好意的で、米国の老舗ゲーム雑誌「コンピューター・ゲーミング・ワールド」では「RPG入門として最適な一本」と評されるなど、当時から一定の評価を得ていた作品です。
さらに特筆すべきは、本作が後のオリジン・システムズ作品に与えた影響の大きさです。同社の名作『ウルティマVI 偽りの予言者(1990年)』は、タイムズ・オブ・ロアのリアルタイム進行、シームレスなオープンワールド、アイコンベースのインターフェースをそれぞれ参考にしており、リチャード・ギャリオット氏自身が影響を認めています。さらに『ウルティマVII』にも影響を及ぼしたとされ、のちの「ディアブロ」や「バルダーズ・ゲート ダーク・アライアンス」の先駆けとも評される、ゲーム史において重要な位置づけの作品です。
第3章|ストーリー|消えた国王と予言の石をめぐる冒険
舞台となるのは、中世ファンタジー風の王国「アルバレス(Albareth)」。かつてこの地は蛮族の侵攻に苦しんでいましたが、国王ヴァルウィンが自ら戦って撃退しました。しかし戦いで傷を負った王は、休息を求めて城を離れたまま消息を絶ってしまいます。
王不在の隙をつくように、国内では貴族たちが権力を争い始め、モンスターが各地を脅かし、王国の秩序は崩壊の危機に瀕しています。そして国の守護を担っていた神聖なアイテム「予言の石(メダリオン)」も何者かに奪われてしまいました。
プレイヤーは、この乱れた王国を救うため、たった一人で旅立つ若き英雄を操作します。行方不明の王の手がかりを追い、奪われた予言の石を取り戻すことが、本作の大きな目的となっています。
第4章|キャラクター選択|3人の英雄から一人を選ぶ
本作では、ゲーム開始時に3種類の主人公から一人を選択します。それぞれ異なる特性を持っており、プレイスタイルに合わせた選択が可能です。
騎士(Knight) 重厚な鎧に身を包んだ正統派の戦士。防御力が高く、安定した戦闘が得意です。初めてプレイする方にも比較的扱いやすいキャラクターです。
女戦士・ヴァルキリー(Valkyrie) 素早い動きを持つ女性戦士。機動力を活かした立ち回りができるため、敵の攻撃を回避しながら戦うスタイルに向いています。
格闘士・バーバリアン(Barbarian) パワーに優れた戦士。攻撃力が高く、力押しの戦闘が得意です。ただし防御面では騎士に劣る面もあります。
キャラクター選択によってゲームバランスや難易度の感じ方が異なり、やり込み要素の一つとなっています。
第5章|ゲームシステムの詳細|当時としての革新性
本作の最大の特徴は、当時の日本のRPGとは根本的に異なる設計思想にあります。以下に主要なシステムを解説いたします。
リアルタイムアクション戦闘
ドラゴンクエストのようなコマンド選択式のターン制戦闘とは異なり、本作の戦闘はリアルタイムで進行します。また、フィールド上でシンボルとして見える敵に直接攻撃を仕掛ける「シンボルエンカウント」方式を採用しており、ランダムエンカウントの煩わしさがありません。
経験値・レベルアップの廃止
本作には、日本のRPGでは当たり前となっている「経験値」や「レベルアップ」の概念が存在しません。キャラクターの強化はすべて装備品によって行われます。より強力な武器・防具・アイテムを手に入れることが、成長の唯一の手段です。この設計は、戦闘を繰り返すことで手軽に強くなるという感覚を好む日本のプレイヤーには驚きをもって受け止められました。
昼夜サイクルとNPCへの影響
ゲーム内では昼と夜のサイクルが存在します。夜間になると一部のNPCが屋内に引っ込んだり会話が制限されたりするため、情報収集や依頼受注のタイミングが重要になります。単に見た目の演出だけでなく、ゲームプレイに直結する要素として機能しているのが特徴です。
食料(ラーション)と宿屋の活用
プレイヤーは冒険中、食料「ラーション」を消費し続けます。食料が尽きると体力が危険な状態になるため、定期的に宿屋を利用して食料と体力を補給する必要があります。この「サバイバル要素」は当時の日本のRPGには珍しく、リアリティとゲームの緊張感を高める仕掛けとなっていました。
アイコンメニューによる直感的操作
本作の操作インターフェースには、アイコンを選択して行動を決定する「アイコンメニュー方式」が採用されています。「話す」「調べる」「戦う」「使う」といったコマンドをアイコンで選択する設計は、当時のPC-RPGにおけるキーボード多用の操作性を、コントローラー向けにうまく落とし込んだものでした。
シームレスなオープンワールドでロードなしに広大なマップを探索できる設計も、当時としては技術的に印象的な要素でした。
第6章|日本版ファミコン版の特徴|東宝によるローカライズ
海外版(NES版)をベースに、東宝がファミコン向けにローカライズを行った日本版は、いくつかの点で日本のプレイヤー向けの調整が施されています。
テキストはすべて日本語化されており、NPCとの会話やメニュー画面が日本語で表示されます。また、操作性についても日本のゲームに慣れたプレイヤーが戸惑わないよう、インターフェースの調整が行われています。
定価は5,300円で、容量は1MB+64KRAMという当時の標準的なスペックの構成でした。東宝がゲーム事業としてファミコンソフトを手掛けた事例として、コレクターの間でも注目されている一本です。
第7章|歴史的評価とレトロゲームとしての価値
発売当時、本作は日本の国産RPGとは大きく異なる「欧米産RPG」としてのテイストが強く、一般的なプレイヤーには馴染みにくい面もあったと言われています。レベルアップのない成長システムや、昼夜・空腹といった管理要素が、シンプルなRPGを求める当時のユーザー層には受け入れられにくかった側面もあったようです。
しかし現代のレトロゲームファンの視点から見ると、本作は「後のオープンワールドRPGの先駆け」とも評価できる革新的な設計を持っています。シームレスなマップ、リアルタイム戦闘、アイコン操作、そして昼夜サイクルという要素群は、当時としては先進的であり、後のゲーム史に多大な影響を与えたオリジン・システムズの技術力とビジョンが凝縮された一本です。
また、クリス・ロバーツ氏が後にスター・シチズンの開発者として大きな注目を集めたことで、氏のキャリアをたどるゲームファンの間でも本作への関心が高まっています。
東宝ブランドのファミコンソフトとして箱・説明書付きの完品は希少性が高く、レトロゲームコレクターの市場でも一定の需要があります。
第8章|こんな方におすすめ
本作は以下のような方に特におすすめできる一本です。
- 欧米産RPGやウルティマシリーズなど、オリジン・システムズの作品に興味がある方
- ファミコン時代の珍しい移植作品を探しているレトロゲームコレクターの方
- レベルアップに頼らない、装備品中心のシステムを楽しみたい方
- 昼夜サイクルや食料管理といった「サバイバル要素」のあるRPGが好きな方
- クリス・ロバーツ氏の初期作品に触れてみたいゲーム史ファンの方
まとめ|タイムズ・オブ・ロアが今も語られる理由
『TIMES OF LORE 失われたメダリオン』は、1990年12月7日に東宝からファミリーコンピュータ向けに発売されたアクションRPGです。オリジン・システムズが1988年にPC向けに開発したオリジナル版をベースに、日本向けにローカライズされました。
経験値・レベルアップのない成長システム、リアルタイム戦闘、昼夜サイクル、食料管理、アイコンメニューといった多彩なシステムは、当時の日本のRPGとは一線を画すものでした。発売当時こそ大きなヒットにはなりませんでしたが、後のゲーム史を振り返ったとき、本作が「ウルティマVI」以降のオープンワールドRPGの方向性に与えた影響の大きさは無視できません。
レトロゲームとしての希少性と、ゲーム史上の重要性の両面から、今あらためて注目に値する一本だといえます。もし中古ゲームショップやネットオークションで見かけた際には、ぜひ手に取ってみてください。
(出典 Youtube)
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