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1989年2月6日にセタから発売されたファミリーコンピュータ用ソフト『トム・ソーヤーの冒険』を覚えている方は、当時ファミコンを遊んでいた世代の中でも意外と少ないかもしれません。同じタイトルを冠した『スクウェアのトム・ソーヤ』の影に隠れがちな本作ですが、実は先に発売されたのはこちらのセタ版だったのです。今回は、原作小説を大胆にアレンジした夢オチストーリーや全6ステージの構成、当時の価格や仕様まで、公的な資料をもとにじっくり振り返っていきます。
1.『トム・ソーヤーの冒険』の基本情報
本作は1989年2月6日、セタよりファミリーコンピュータ用ソフトとして発売されたアクションゲームです。当時の価格は5,900円(税抜)、ロムカセットの容量は2メガビットでした。原作は1876年にマーク・トウェインが発表した児童文学『トム・ソーヤーの冒険』で、19世紀アメリカを舞台にした少年トムの冒険物語として広く知られています。セタといえば将棋やパチンコ・パチスロ関連のソフトを多く手がけたメーカーというイメージを持つ方も多いですが、本作のようなアクションゲームも制作していました。
2.学校で居眠り、夢の中で大冒険というストーリー設定
本作の物語は、学校の授業中に居眠りをしてしまうトムから始まります。プレイヤーが操作するのは、そのトムが見た夢の中の世界です。夢の中でトムは、悪党インジャン・ジョーをはじめとする敵たちを倒すために冒険へと旅立ちます。原作小説そのものを忠実になぞる内容というよりは、「トムの夢」という設定を活かして自由な世界観が展開されているのが特徴で、原作の再現度としてはかなり大胆にアレンジされている点が挙げられます。パッケージにはトム、ハック(ハックルベリー・フィン)、そしてヒロインのベッキーが描かれており、ベッキーはエンディングで登場するキャラクターとなっています。
3.全6ステージの構成とアクション面の特徴
本作は全6ステージで構成されたアクションゲームです。1面はイカダに乗って川を下る縦スクロールのシューティングステージとなっており、Bボタンでの投石やパチンコによる攻撃、Aボタンでのジャンプが基本操作になります。ただし着地する場所を誤るとミスになってしまうシビアな一面もあります。2面以降はステージごとに舞台が変わり、森や洋館、空、船、岩場といった多彩なロケーションを冒険していく横スクロールアクションへと切り替わります。操作方法自体はシューティング面とアクション面で共通しており、投石やジャンプを駆使して敵を回避したり撃退したりしながら先へ進んでいく設計です。
4.2人プレイ対応、トムとハックの交互プレイが可能
本作は2人でのプレイに対応しており、プレイヤー1がトム、プレイヤー2がハックを操作する仕組みになっています。ただし同時プレイではなく、交互にプレイするスタイルが採用されています。トムとハックの間に能力的な違いは特に設けられておらず、キャラクターの見た目が異なるだけというシンプルな仕様です。なお、2人交代プレイの場合はコンティニューができなくなる点には注意が必要で、当時これに気づかずに苦戦したプレイヤーも少なくなかったのではないでしょうか。
5.登場する敵キャラクターとボスの個性
本作の道中には、森の昆虫や蛇といった小さな敵から、行く手を阻む個性的な敵キャラクターまで幅広く登場します。中でも印象的なのが、猿の群れが集結して巨大なゴリラへと姿を変え、口から岩を吐き出して攻撃を仕掛けてくるボス戦です。原作小説には登場しないオリジナル要素も多く盛り込まれており、「トムの夢の中」という設定だからこそ許される、自由な発想の敵キャラクターデザインが随所に見られます。物語の中心的な悪役であるインジャン・ジョーも、原作やアニメ作品と比較すると弓矢を使って戦うなど、ゲームならではのアレンジが加えられている点が特徴です。単純な力押しではなく、投石やパチンコでの攻撃タイミングを見極めながら進める必要があるため、見た目以上に手強さを感じるステージ構成になっています。
6.同時期に発売された『スクウェアのトム・ソーヤ』との違い
本作と同じ原作を題材にしたファミコンソフトとして、スクウェア(現スクウェア・エニックス)が1989年11月30日に発売した『スクウェアのトム・ソーヤ』があります。こちらはロールプレイングゲームというジャンルで、セタ版とはゲーム性がまったく異なります。実は原作を題材にしたファミコンソフトとして先に発売されたのはセタ版の本作であり、後発となったスクウェア側が両者を区別する目的で、あえて自社の社名をタイトルに冠したという経緯があります。同じ原作、同じ機種でありながら、片やアクション、片やRPGとまったく異なるアプローチで制作されていた点は、当時のゲーム業界の面白さを物語るエピソードといえるでしょう。
6.当時のプレイヤーからの評価や受け止められ方
本作に対する当時の評価は、決して満場一致の高評価というわけではなく、良い意味でも悪い意味でも「可もなく不可もなく」とまとめられることが多い作品です。グラフィックやサウンドについては丁寧に作り込まれているという声がある一方で、ゲームシステム自体は当時のアクションゲームとして特別な目新しさに欠けるという厳しい見方もありました。とはいえ、原作の少年小説を題材にしながら、シューティングとアクションを組み合わせた欲張りな構成に挑戦した点は評価できるポイントといえます。また、後年になってレトロゲームを紹介するテレビ番組で取り上げられたこともあり、当時をリアルタイムで知らない世代にも本作の存在が知られるきっかけとなりました。堅実な作りでありながら地味な印象を持たれがちな本作ですが、ファミコン黎明期から中期にかけての試行錯誤の跡が感じられる一本として、レトロゲームファンの間では一定の存在感を保っています。
7.当時を知る世代にとっての『トム・ソーヤーの冒険』
派手な演出や革新的なシステムがあるわけではないものの、グラフィックやサウンドは良好にまとまっており、アクションゲームとして堅実に作られている点は当時のファミコンソフトらしい魅力といえます。「トムの夢の中」という設定によって、原作ファンからすると自由度の高いアレンジが施されている一方で、当時の子供たちにとってはシンプルに楽しめるアクションゲームとして受け入れられていた作品でもあります。同じ原作を扱った『スクウェアのトム・ソーヤ』と聞き比べられることが多い本作ですが、発売時期でいえば先輩にあたるのはこちらのセタ版であるという点は、意外と知られていない豆知識ではないでしょうか。ファミコン全盛期にこうした児童文学を題材にしたソフトが複数登場していたこと自体、当時のゲーム市場の勢いを感じさせてくれます。
改めて振り返ってみると、本作は決して大ヒット作ではないものの、原作小説の設定を大胆に「夢」というフィルターを通してアレンジし、シューティングとアクションという2つの要素を1本のソフトに組み込んだ意欲的な作品であったことがわかります。当時ファミコンで本作を遊んだ経験がある方にとっては、猿の大群やインジャン・ジョーとの攻防、そして2人交代プレイでのハックとの冒険など、懐かしい記憶がよみがえるのではないでしょうか。令和の今となっては中古市場でしか手に入らない作品ではありますが、レトロゲームとしての魅力は色あせることなく残っています。
(出典 Youtube)
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